“箱根縄文族”の暮らし
2019.09.19
“箱根縄文族”とここでいうのは、現在の箱根・芦ノ湖があるカルデラ内に住んでいた縄文人のことです。

学術的にそういう名称があるわけではありませんが、箱根火山の「古期外輪山」のなかに生じた仙石原湖や芦ノ湖沿岸に住んでいた“ハイレベル”な縄文人たちです。

古期外輪山(カルデラ)は約25万年前に形成されましたが、約13万年前の火山活動によって、カルデラ内東部に半月状の「新規外輪山」が形成されます。

さらに約5万年ほど前に現在の中央火口丘群のプレ「神山」によって東部の箱根湯本方面に流れる「早川」が溶岩流によってせき止められ、「仙石原湖」(一部は「芦ノ湖」)ができました。

ですが、それも約1万年前からの何度かのマグマ噴火を経たのち、約3,000年前の「神山」の水蒸気爆発によって、大涌谷が生まれるとともに、仙石原湖は大半が埋没し、現在の「仙石原」ができます。

このとき残った仙石原湖の一部が、仙石原にせき止められて「芦ノ湖」(旧「万字ヶ池」)が形成されました。

箱根縄文族は、この間、予測なので確かではありませんが、約5,000年前後ほど前から仙石原湖(一部は芦ノ湖)周辺に住んでいたと思われます。

このような火山活動の営みのなかでも生き残った箱根縄文族は、芦ノ湖周辺で大自然を畏れ崇めつつ、霊峰富士や周辺の大自然の恵みのなかで豊かな暮らしをしていくことになります。

かつて“函根”また“函根山”と総称された「箱根カルデラ」は、天然の箱根関所にも守られて、“函谷関”のように外からの侵入を長らくはばみ、独自の暮らしを平和に営むのに充分な地形を備えていました。

そういった箱根縄文人の生活は、だいたい次のようなものです。

約3,000年前のカルデラ内北部における水蒸気爆発以降、上述のように外からの侵入を阻む地形に守られて「安全」に自立した独自の“箱根縄文文明”を築くことができました。

重要な「食料」にしても、周囲の山々から木の実の採集や野生の動物の狩猟が、だれにも邪魔されずに可能なので“山の幸”にはこと欠きません。

また、現在のデータながら、平均水深15メートル、最深部43.5メートルの芦ノ湖は、もともとは「早川」で「仙石原湖」だったのことから、魚も多く“川の幸”にも恵まれていました。

現在もワカサギや巨大化したヘラ鮒やイワナ、ヒメマス(紅鮭)やニジマスなどが泳いでいます。

住環境は、さらに秀逸です。
山中なので底霧が幻想的な風景をもたらすことがありますし、箱根といえば何よりも“温泉”が有名です。

寒い冬でも地熱を利用したり、温泉に入れば容易に寒さをしのくことができますし、毒ガスには注意しなければなりませんが、地下から噴き出す蒸気によって、火がなくても料理が可能だからです。

恵みは湖畔周辺のみにかぎりません。

中央火口群の一つ、山頂に箱根大神(はこねのおおかみ)を祀る「元宮」がある標高1,356メートルの箱根駒ケ岳に登れば、西方面には富士山(画像参照)を眺望できます。


●箱根駒ケ岳山頂より「富士山」を臨む。

東方面の眼下には、小田原や相模湾を臨み、横須賀がある三浦半島を遠望できる景勝景観の地が箱根カルデラだからです。

和辻哲朗の『風土-人間学的考察』に記されるように「風土が人間に影響する」という観点から、芦ノ湖周辺に住んでいた箱根縄文族の大自然を信仰する“人柄”や“暮らし”また“文明”の形成に、大きく影響したことはいうまでもありません。

ちなみに、一部で“毒を吐く”といわれる「九頭龍」は、箱根九頭龍とは関係がなく、ファンタジーの西洋ドラゴンのことです。

箱根九頭龍は、箱根カルデラ内の芦ノ湖沿岸を住処としていた箱根縄文族が崇めた地主神(国津神)のことで、その族長(おさ)や元祖のことです。

それゆえ、箱根駒ケ岳の山頂の元宮に祀られる「箱根大神」というのは、“大神”が太祖の神を呼ぶことからもわかるように、箱根縄文族の族長(おさ)や族の元祖である“九頭龍大神”のことをさします。

しかし、その後いつしか“天津神”が降臨し、箱根カルデラ内にも進出するにおよんで、湖畔道路の脇にある「箱根神社」を創建し、瓊瓊杵尊(ににぎの みこと)、木花咲耶姫命(このはな さくやひめの みこと)、彦火火出見尊(ひこほほでみの みこと)の三柱をご祭神に定め、これを「箱根大神」と称するようになりました。

つまり、本来の「箱根大神」(九頭龍大神)というのは、箱根「九頭龍神社」と「元宮」の神なのです。

現在の道路脇の「箱根神社」は、いわゆる“征服”というのは言い過ぎかもしれませんが、“国譲り”というべきか“共存”することになった天津神族との融合併呑によって、新たに祀られるようになったもので、それを現在“箱根大神”と神社側では呼んでいるわけです。









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