「古典占星術」の“理論”
2021.06.05
 
現代の“西洋占星術”は、19世紀の「神智学協会」からはじまりました。

「神智学協会」というのは、“神を科学する”という名目はともかく、現在科学で神があかせるはずもなく、正体はオカルトチックな新興宗教の組織です。

その「占星術ロッジ」(占星術支部)に所属したアラン・レオ(獅子宮)らによる「太陽」を重視した占星術解釈を端緒とします。

彼は、“理論破綻”していた、それまで約2,000年間続いていた「古典占星術」を完全に捨てました。

オカルトチックな神智学協会らしく、“当たる・当たらない”の「占い」に転化させたのです。


2,000年以上前の古代ギリシャにはじまった「太陽~土星」まで7つの星による「古典占星学」の理論は、アメリカ独立戦争中に「天王星」(第7惑星)の発見(1781年)によって、大混乱に陥りました。

さらには、直後の当初は“第8惑星の発見”(1801年)と騒がれた「ケレス」によって完全に理論破綻しました。

また、1846年の「海王星」(第8惑星)の発見は、“疑似科学”の古典占星術を、海王星らしく理論的根拠のない昨今の“占い”の「西洋占星術」へと変えたのです。

要は、“神秘主義”という名の心霊主義やスピリチュアリズムなど、当時の“オカルト・ブーム”をもたらした「海王星」によって、アラン・レオは「双魚宮時代」(そうぎょきゅう じだい)末期のいわゆる“西洋占星術”を立ち上げたのです。

双魚宮時代のメインストリーム「宗教」との類比で申し上げますと、同時代初期の古代ギリシャの「古典占星学」は、「仏教」や「キリスト教」など世界宗教(木星の象意)にあたります。

一方、同時代末期のアラン・レオによる西洋占星術は、そこから派生した多様な「新興宗教」(海王星の象意)と同じスタンスであることを象わします。

それゆえ、西洋占星術は“雨後の筍”のように、さまざまな解釈が存在します。

江戸時代以降、現代風にアレンジされた新興宗教は、伝統ある「仏教」や「キリスト教」から“雨後の筍”のように派生し、名前を挙げればだれでも知っているほどさまざまに生じました。

これらは、良し悪しは別にして“本家”からみれば、“カルト宗教”にほかなりません。

アラン・レオの「西洋占星術」も同様なのです。

そのため、本家の古典占星術の「アストロロジャー」(占星術師)からは、さまざまな批判があがりました。


結局、1930年の「冥王星」の発見をふまえて、部分的ながら古典占星術の(古い)“理論”の一部を適用させて、もっともらしく仕上げたのが現代「西洋占星術」です。

「古代ギリシャの世界観」(四大元素説)による古典占星術は、天王星の発見や、近代科学の発達によって、すでに現代社会には通用しない“遺物”となっていたのにもかかわらず、体裁を保つために西洋占星術はそうするしかなったようです。

そういったことがありまして、その後も現代的(科学的)な「理論」をみいだそうと、さまざまに新解釈が乱立したものの、結局は死者をツギハギだらけにした“フランケンシュタイン”のようにモンスター然と“混乱”しているのが、2,000年以上前の疑似科学「四大元素説」(火風地水)をいまだに引きずっている昨今の「西洋占星術」です。


もっとも、“信教の自由”は保障されていますので、信奉するのは自由でかまいません。


かまいませんが、本当のところは、初学者はわかりませんし、ビジネスに利用している占星術師は明かしませんが、西洋占星術を真剣に探求してきた西洋占星術師や研究者ほど、昨今の西洋占星術の混乱ぶりに、「もはや一から再構築するしかない」というのが、“ホンネ”としてつぶやかれている現状です。


そこで、今回は「古典占星術」の“原点”を振り返ってみようと思います。

一例ですが、「古典占星術全講」に記されている「占星術の原理」は、次のようなものです。


【占星術が成り立つ原理】

「宇宙は霊によって満たされている。
その力の働きによって、さまざまな現象が起きる。

そのように地上にことが起きるときは、天上界から純粋な霊が降下してきたからである。

しかし、純粋な霊は、地上の資質をもっていない。
そのため、そのままでは地上的な働きをすることができない。

ただし、天上界と地上界とのあいだにある星辰界、すなわち霊は星の世界を通り抜けてくるあいだに、その星辰界の相によって、地上的な資質を受ける。

このことが占星術の基本的原理になっている。

つまり、純粋な霊に、どのような地上的資質が与えられたのかを、星の配置から知ることができるのである。」

※「古典占星術全講」より抜粋


どのようにご判断されるのかは、みなさまのご自由です。


ですが、個人的には論理矛盾を含む“天動説”的な解釈だといえます。

なぜなら、「天上界と地上界とのあいだにある星辰界の相によって、地上的な資質を受ける」や、また「星の配置から霊のはたらきを知ることができる」と述べているからです。

まず、「ホロスコープ」(占星術)でもちいるのは、太陽系の星のみです。

星辰界(宇宙)全体をもちいるわけではありません。

「12サイン(宮)」を誤まって、“○○座”と呼称するために、勘違いしておられるかたがいますが、太陽(天の赤道)と地球(歳差運動)による「春分点」を起点に12サイン(宮)は定められています。

星辰界(宇宙)全体はもちろん、人間がかってに想像した幅も位置も異なる宇宙の「星座」は、占星学(ホロスコープ)とは関係がないのです。


上述では、「星辰界の相から地上に影響をおよぼす純粋な霊の働きを知ることができる」としています。

ですが、“霊”がどのような仕組みで地上に影響をおよぼすのかは述べていません。

それどころか、「霊は星辰界の相によって地上的な資質を得る」ということは、ヘタをすると、“霊”よりも「星辰界」のほうが地上に強いはたらきをもたらしているという解釈になりかねません。

「双魚宮時代」の占星術らしく、“霊”をなんとか「星の相」(ホロスコープ)とを結び付けようとする努力は認められますが、「古典占星術の原理」とはいうものの、根本的な論理矛盾が認められます。

というか、“霊”を万能かのようにとらえているあたり、さすがに「双魚宮時代」の古い解釈です。

昨今の西洋占星術も類似で、そのような理論も理屈もない、“当たるも八卦、当たらぬも八卦”の根拠のない占いという現状に落ちてしまいました。

第一、世界が「火」「風」「土」「水」の“四大元素”から成り立ってるといえば、いまどきの小学生からも笑われるでしょう。

元素記号1の「水素」にはじまり、元素記号118の「オガネソン」といった100以上の元素が、すでに認められているからです。


それはともかく、上述の“霊”を絶対視した「古典占星術の原理」に対して、宝瓶宮時代の「共鳴関係論」からご参考に申し述べておきます。


“霊エネルギー”は、生きている人間も無自覚ながらもっています。

成長段階に応じて個人差があるものの、生きている人間は“霊”単体よりも強いのがふつうです。

なぜなら、地上に生きている人間は、当然、「生命エネルギー」(生体エネルギー)を兼ねそなえているからです。

少しご理解しにくいかと存じますが、「生命エネルギー」を有した活動によって、いわゆる“霊性”(深層の精神意識)に“エネルギー”を送り続けています。

植物にたとえますと、根っこが土壌から養分を吸収して葉をみのらせるだけでなく、葉も光合成などによって根っこを広く深く大地に根差していくのと同じです。

単純にいえば、そのような「生命エネルギー」を失うことが、俗にいう「死」です。

なので、死は「霊性」から“性”がとれて「霊」(エネルギー)単体になることを意味します。

ということで、個人差は人それぞれにありますが、“霊エネルギー”よりも、生きている人間がもっていて発する「エネルギー」(自由な意志エネルギー)のほうが強いのが、ふつうに事実なのです。

そのため、“純粋な霊”を万能視し、“霊”によって占星術(ホロスコープ)を解釈するのは、双魚宮時代と同様に「占星術の原理」としては時代遅れで、根本的に間違っているというお話です。



※ご参考
ちなみに、そう断言する以上、宝瓶宮時代の新しい占星術「宝瓶宮占星学」は、基礎理論とする「数理法則」によって、宇宙この世界はもちろん、ホロスコープにおけるすべての“本意”を明らかにすることができます。
その「伝授」や「実技」は、別途「講座」によって適時ながら、明らかにし続けています。

















コメント一覧
直塚万季 - 2021年06月10日 00:00
はじめまして。

占星術に関しては、専門的なことはわかりませんが、見識のあるブログ内容を楽しませていただいています。ありがとうございます。
ただ、この記事には個人的に違和感を持ったので、僭越ながらコメントさせていただいています。

わたしは神智学を知って、かれこれ40年になります。素人ながら純文学の創作をライフワークとしており、その合間に、気ままに学んできたといった程度です。

アラン・レオ氏をこれまで知りませんでした。オンラインで読める小伝と英語版ウィキを閲覧したところです。まだ魔女法のあった時代に独創的な活動をしたレオ氏に、ちょっと興味が湧きました。

神智学協会の目的は三つです。
①人種、信条、性別、階級、皮膚の色の相違にとらわれることなく、人類愛の中核となること。②比較宗教、比較哲学、比較科学の研究を促進すること。③未だ解明されない自然の法則と人間に潜在する能力を調査研究すること。

ブラヴァツキー『神智学の鍵』によると、神智学という名は、アレクサンドリア哲学中、真理愛好家といわれているフィラレーテイアン派(新プラトン派)から来ています。フィルは愛すること、アレーテイアンは真理という意味です。

神智学協会のモットーは「真理に勝る宗教なし」で、前掲書にも「信仰という言葉は神智学の辞書にはありません。その代わりに観察と経験に基づいた知識があるのです」とあります。

インド神智学協会の会長となったアニー・ベサントの影響で協会が宗教化しかかったときに多くの会員が協会を離れたのは、彼女の行為がこのモットーに反すると考えたからでしょう。

自由を尊ぶ協会の気質から、会員達は会誌や神智学書籍に学び、また、集会など行って、基本的には各自の課題に取り組んでいるという風です。わたしもずっとそうでした。

キリスト教や仏教などの宗教組織に属している人もいますが、神智学徒にとって宗教は第一に研究対象なのです。ですから、神智学協会が新興宗教の組織という見方には違和感があります。

神智学協会の影響を受けたアラン・レオ氏から西洋占星術がはじまったというのであれば、違和感がありません。

私事になりますが、プラトンとプロティノス、そしてブラヴァツキー夫人の著作に最も魅せられ、また夫人の実質的な後継者といえるヘレナ・レーリッヒ以外の本には、今ではほとんど興味が湧かなくなりました。興味の持ち方は会員によって様々でしょう。

わたしはブラヴァツキー夫人の著作から、新プラトン派の芳香を嗅ぎます。伝統を感じます。神智学協会が新プラトン派の流れに属するとすれば、神智学協会の起源を遡ることができるのではないでしょうか。

オカルト科学、神秘主義、心霊主義、スピリチュアリズムは、前掲書を読むと、それぞれが厳密に定義づけられていることがわかります。

ブラヴァツキー夫人は心霊主義と戦ったために(批判したために)、ひどい攻撃を受けました。

日本語版ウィキの「神智学協会」「ヘレナ・P・ブラヴァツキー」はあまり信用しないでください。労作なのでしょうが、左翼が書いたものと思われ、まとめかたが変なので、頭がおかしくなります。

邦訳版『神智学の鍵』の用語解説には、「星学(Astrogy)」についての1頁半の解説があります。『シークレット・ドクトリン 宇宙発生論(上)』と『実践的オカルティズム』には星学(天文学)に関する興味深い断片が散りばめられています。お勧めです!

神智学では、人間を含めて宇宙のあらゆる生命、また宇宙そのものも「七本質」という七つの要素からなっていると教わります。霊と物質の同一性を主張し、霊は潜在的な物質であり、物質は結晶した霊にすぎないといいます。

なお、神智学では、一太陽プララヤ後の地球惑星体系とそのまわりの目に見えるものの(宇宙)だけが扱われています。

稚拙な拙動画ですが、神智学に関するものが2本あります。気が向かれたら御視聴ください。勿論、神智学協会ニッポン・ロッジの動画もYouTubeにあります。

「原子の無限の分割性」とブラヴァツキー夫人は言う
https://youtu.be/c54EEOWPngo

ブラヴァツキー夫人がニューエイジの祖というのは本当だろうか?
https://youtu.be/8P_BG00ssNY
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