冥王星の衛星「カロン」の意味
2018.06.26
ギリシャ神話に、“冥界の河の渡し守”「カロン」という名の“神”がいます。

3年前の2015年、NASAの探査機「ニュー・ホライズンズ」が至近距離を通過し、細密な画像データを送ってきたことで話題になった「冥王星」。

冥王星は、月より少し小さいサイズにもかかわらず、大小をあわせると4つ以上の衛星をもちます。
その中でも、冥王星の半分ほどの大きさがあり、距離も近いため、お互いがお互いを回る“二重惑星”と推測される「カロン」はもっとも知られています。

実は、この冥王星とカロンはアメリカ人が“誇る”惑星です。

なぜかというと、太陽系の惑星や占星学(ホロスコープ)でもちいられる十大惑星(メイン・プラネット)のうち、唯一、アメリカ人が発見した星だからです。

「冥王星」という和名は、日本人の野尻氏が名づけたもので、中国でも同じように使われています。

その原語「Pluto」(プルート、プルートー)は、神話に興味があった11歳の少女ヴェネチア・バーニーがつけたもので、ローマ神話に出てくる“冥府の王”「Pluto」に由来します。

“Pluto”の頭の2文字「PL」と、冥王星の存在を導き出していた「パーシヴァル・ローウェル」の頭文字「P.L.」が同じでもあることから、天文学では「P」と「L」を組み合わせた「♇」を冥王星の惑星記号としています。

ちなみに、占星術(ホロスコープ)では、もう一つ、海王星に似た記号を使う人もいますが、日本では♇がメジャーです。

さて、今年2018年は冥王星の衛星「カロン」が発見されてからちょうど40年。

親星がローマ神話の“冥府の王”「プルート」なので、その衛星が「カロン」(Charon)だと聞くと、神話に詳しいかたは、「ああ、こちらはギリシャ神話で“死者の魂を舟に載せて運ぶ”カロンなのね」となってしまいます。

これって、“ジョーシキ”と思いきや違ったんです。

カロンの発見者でアメリカ海軍天文台に勤務していたジェームス・クリスティー氏によると、“Charon”と命名したのは、妻「Charlene」(シャーリーン)さんの名前の最初の4文字と、ご自分が好きな物理学の「Ploton」(プロトン:陽子)や「Electron」(エレクトロン:電子)の最後の2文字「on」を結合して、「Charon」(シャーロン)にしたといいます。

なので、英語圏では「カロン」ではなく、「シャーロン」と呼ばれることが多いようです。

それにしても、ローマ神話の“冥府の王”「プルート」に由来する「冥王星」の衛星が、ギリシャ神話ながらも“冥界の河ステュクス(憎悪)またその支流アケローン川(悲嘆)の渡し守”である「カロン」(カローン)と偶然にも同じで、実際の命名はそのことを知らずに、妻の名前から「カロン」(シャーロン)を提案してしまったなんて、なにか不思議な関係を感じ、「どういうこと?」と思っちゃいます。

ですが、”Astrology”(アストロロジー:天体学)すなわち「占星学」の世界では、こういった“偶然”とも“必然”ともいえないような星に関するエピソードは、案外と多くみることができます。





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