熱田神宮の“秘密”-参拝
2017.07.28
おおげさに「熱田神宮の“秘密”」とまで書くほどのことではないのですが、感想をひと言。

わずか1日の熱田神宮参拝ですが、想像していた「熱田神宮」とは異なって、霊妙さはあるものの、どこか気になる部分を残しています。
それは「疑問」ともいえるものでした。

古代より、神剣「草薙の剣」が奉安されていることは、周知のとおりです。
そういったことから、素戔嗚尊-大国主神系の神社を予想していましたが、その痕跡はほぼなく、伊勢神宮と同じく内削ぎの千木(ちぎ)と偶数の鰹木(かつおぎ)からなる「神明造」の立派な神社でした。

内削ぎの千木(ちぎ)や偶数の鰹木(かつおぎ)は、基本、女性の神を象わします。
祭神の筆頭にはたしかに一般的に女神とされる「天照大神」が祀られていますが、「草薙の剣」を奉安する以上、本来は「素戔嗚尊」が主祭神であるはずです。

ちなみに天照大神が「皇祖」ですが、これは明治天皇がそのようにご裁可をくだして以降のことなので、『日本書紀』に記される本来の皇祖は「高皇産霊神」(たかみむすびのかみ)です。

それはともかく、上述の違和感は調べてみたらみえてきました。
本来の熱田神宮は、日本三大奇祭の「はだか祭り」で知られる尾張大国霊神社などと同じく「尾張造」だったということです。

それが、天照大神が皇祖に定められた明治以降、「三種の神器」を奉安するゆえに、22年に伊勢神宮に準じた扱いが認められ、それと引き換えかのように、明治26年になって「尾張造」から「神明造」に立替えられたというのです。
そのときの本宮は、先の戦争によって焼失しています。

結局、『日本書紀』の「神代」一書の「天孫降臨神話」によって、本来、素戔嗚尊や大国主神(大已貴神)が所有していた「草薙の剣」は、最初から天照大神の所有とされ、熱田神宮も伊勢神宮と同じ「神明造」に変えられて現在にその姿を残しています。

過去に「国譲り」をした結果なので、それも仕方ないのかもしれませんが、本当に見たかったのは素戔嗚尊また大国主神系の熱田神社、すなわち「尾張造」の熱田神宮です。

ここに違和感や疑問の原因があります。

ちなみに、2012年12月から立ち入り禁止が解かれ、公開がはじまった本来は「熱田大神」の荒御魂を祀る「一之御前神社」(いちのみさきじんじゃ)も、今回、ご参拝してきました。
今は天照大神の荒御魂を祀ります。

個人的な推測ですが、荒御魂を祀る神社こそが当地の本来の神を祀る神社だと考えています。

熱田神宮の本宮も、一之御前神社も、「神明造」になっていましたが、同じ神明造でも伊勢神宮とは異なる霊妙さがありました。

それは、たとえカタチばかり「神明造」に身をうつしても、魂は御神体の神剣「草薙の剣」とともに此の地に残し、武家社会によって日本を守ってきたからでしょうか。


●本宮(参拝所)屋根の平削ぎの千木と10本の鰹木


●最近一般公開された荒御魂を祀る一之御前神社


●かつてご神体の「草薙の剣」が奉安されていたとされる土用殿


参考:「尾張造」の熱田神宮(熱田神社)…明治5年撮影

熱田神宮の拝殿-「壬申記録写真」より 横山松三郎氏 明治5年撮影


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