「在韓米軍撤退」の杞憂
2018.06.09
昨今、「米朝交渉」にかんして、交渉が成立すれば「在韓米軍」が撤退する、そうなると現在の“38度線”が対馬海峡まで降りてきて、日本が対中対ロの「最前線」になるという有識者やコメンティターがいます。

理由は、北朝鮮が「核ミサイル廃棄」の条件として、自国の安全を求めるなかに、「半島の非核化」という一文があったからです。

つまり、北朝鮮が「核ミサイルの廃棄」を行なうには、韓国に駐留する「在韓米軍」を撤退させて朝鮮半島全体を非核化することが条件だからというわけです。

そうなると、在韓米軍の一部が日本に撤退駐留することになり、いわゆる“防共ライン”が日本になるというのが、彼らの分析です。

本当でしょうか?

彼らの分析には、論理の飛躍や表面的な見方しかしていない陥穽(かんせい:落とし穴)があります。

理由は、次のとおりです。

第1に、単純に考えて、いまどき韓国内に「核ミサイル」など配備していません。
そのため「半島の非核化」という条件は、北朝鮮が核ミサイルを廃棄すればそれでクリアーできます。

アメリカは、かねてより「在韓米軍」の削減を方針としてきていますし、韓国をさほど信用していません。

そんな韓国に「核ミサイル」を配備していれば、中国と陸続きでもあることから、いつなんどき機密を奪われるかもしれず、とっくの昔に「核ミサイル」など置いていません。

もし必要があれば、太平洋に潜む米原子力潜水艦から「核ミサイル」を発射すれ済むことです。
また、B52戦略爆撃機はもとより、最新のステルス戦略爆撃機B-2から核搭載のトマホークを打ち込めば、核の場所も特定されず、より確実です。

第2に、北朝鮮が要求する「体制保証」からみても「在韓米軍」が半島に駐留していたほうが安全です。

どういうことかというと、北朝鮮の「主体思想」(チュチェ思想)というのは、中国やロシアからの自主独立をも意味します。

そのため、アメリカを利用して、中国やロシアとの距離をおきたいというのが、金正恩のホンネです。

アメリカは、当然、そのことをつかんでいて、米朝首脳会談がうまくいけば、かつて「米朝同盟」の可能性もあるとこのブログで書きましたが、それに近い「米朝経済関係」が築かれることになります。

その際、トランプ米大統領がいうように、「核ミサイルの廃棄」と引き換えに、アメリカ「国家」としては、北朝鮮に直接の関与はしませんが、「アメリカ企業」が北朝鮮に資本を投下して、“先進国”並みの経済繁栄をもたらすと語っています。

その際、誰が「アメリカ資本」やアメリカになびいた「北朝鮮」を守るのかということです。

地続きの韓国内に「在韓米軍」がいてくれたほうが、米中ロ三者の「軍事バランス」がとれて、平和と安全が保たれるというのが、国際軍事の常識です。

もし、「在韓米軍」が撤退して“軍事空白”が生じると、中国やロシアが侵攻し、軍事前線基地を築きます。

実際、フィリピンなど東アジアはもちろん世界各地で、そのような事態が起きてきた現実があります。

ということで、頭が切れる金正恩は、「在韓米軍の駐留を容認」する態度を示しているのが実情です。





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